マンモグラフィ撮影〔新装版〕

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手にとるようにわかる マンモグラフィ撮影 新装版 この本の使い方
書籍紹介

■ 「ポジショニングの基本とコツ」や「撮影画像に見られる典型的な異常状態とその解決策」について,実際のモデル写真と症例写真を元に丁寧に解説.
■ 撮影技術がぐっと上がるアドバイスが満載.
■ 撮影の基本「乳腺を伸展して固定する」を実践するための一冊です.
■ 写真221点 図版11点

発刊にあたって

 「小山君,ポジショニングの本を書きなさい」.木村千秋先生(マンモグラフィ検診精度管理中央委員会:現 日本乳がん検診精度管理中央機構 初代事務局長)に言われて10年近くが経ちましたが,ようやく実現することができました.先生が亡くなられて5年が経ってしまいましたが,私の中では胸のつかえがとれた感じがしています.
 私とマンモグラフィの出会いは,当施設にマンモグラフィ専用機が導入された1987年にさかのぼります.「これからは女性が中心になる業務だ,小山やってみないか」と先輩が,たまたま傍にいた私に声をかけてくれたのが始まりでした.撮影室の壁をピンク色に塗ってもらい,撮影室の環境,男性技師,女性技師の対応,希望などのアンケート調査を行い学会発表したことが,堀田先生はじめ多くのマンモの諸先輩と知り合えるきっかけでした.
 1995年,堀田先生から声をかけていただき,マンモグラフィ検診の先進国である北欧フィンランドに留学する機会を得て,私の人生は決定されたように感じています.
 確立された精度管理,そしてポジショニング.日本からの研修者である自分に対して熱心に指導していただけたことは大きな財産となりました.特にポジショニングは,受診者に説明してたくさんの方を撮影させていただきました.日本人のような乳房は少ないですが,その理論に則った撮影で撮影技術の精度管理も十分できていると感じました.
 帰国後,研修してきたとおり撮影しても上手く撮れません.試行錯誤して行き着いたところが,欧米人と日本人の乳房は違う.同じ方法ではいけないということでした.特にMLOのCアームの角度は大きく見直す必要性を感じました.ただ,フィンランドの撮影理論はしっかりしていました.基本は「乳腺を伸展して固定する」です.
 本書はこれらの経験を踏まえながら,フィンランドで教わったちょっとしたコツを含め,多くの先輩,仲間と論議し,理論的に構築させていったポジショニングを,本当に手にとるようにわかりやすく解説できたと思っております.
 また,私のこだわりとして,導入部分はなく,すぐメインのポジショニングになっております.同じことの繰り返しとなる部分もありますが,少ししつこく書いてあるところは大事なことと思ってください.「小山らしいな」と思っていただければ幸いです.
 日本におけるポジショニングの精度管理はまだまだ不十分と思っております.受診者がどこの施設に行っても同じ精度のポジショニングを受けることが,乳がん死亡率の低減につながると信じています.この本がその一助になればと願います.
 最後に,今日までご指導いただきました諸先輩,また,構想から出版まで4年近く,諦めずに導いていただきました担当の藤森様はじめ株式会社ベクトル・コアに心から感謝いたします.
2015年3月
小山智美

目次

Chapter 1:ポジショニングの基本とコツ
MLO(内外斜位)方向撮影
 Step 1:受診者の立ち方を確認する
 Step 2:受診者の立ち位置を確認する
 Step 3:乳房支持台へセッティングする
 Step 4:乳房支持台へ固定する
 Step 5:固定した乳房の形成:可動性組織を移動する
 Step 6:固定した乳房の形成:乳腺組織の伸展を行う
CC(頭尾)方向撮影
 Step 1:受診者の立ち方を確認する
 Step 2:受診者の立ち位置を確認する
 Step 3:乳房支持台へセッティングする
 Step 4:乳房支持台へ固定する
 Step 5:固定した乳房の形成:可動性組織を移動する
 Step 6:固定した乳房の形成:乳腺組織の伸展を行う
その他の撮影法
 1.ML(mediolateral:内外)方向撮影
 2.LM(lateromedial:外内)方向撮影
 3.スポット撮影
 4.拡大撮影
 5.形成術後の乳房撮影
 6.温存療法後の乳房撮影

Chapter 2:トラブルシューティング(異常状態の原因と解決法)
画像の合格基準
 1.MLO方向撮影
 2.CC方向撮影
症例1
 チェックポイント1:大胸筋と重なる乳腺の領域と立ち方
 チェックポイント2:引き寄せた乳房を平行移動しているか
症例2
 チェックポイント1:乳房支持台と立ち位置との関係
 チェックポイント2:乳房支持台の角度
症例3
 チェックポイント1:前後の立ち位置
 チェックポイント2:乳房下部組織の持ち上げ方
 チェックポイント3:返した手の位置
 チェックポイント4:合格基準の真の目的
症例4
 チェックポイント1:受診者の立ち方
 チェックポイント2:合格基準の真の目的
症例5
 チェックポイント1:受診者の立ち位置
 チェックポイント2:乳房支持台の高さ
症例6
 チェックポイント:乳腺の引き出し方向
間違った手の使い方の典型例
 1.MLO編
  乳腺の寄せ方/乳房の持ち上げ/手の返し/乳腺の広げ方/腕の抜き方
 2.CC編
  乳腺の引き出し方/乳腺の引き出し方向/手の返し/乳腺の広げ方

Chapter 3:知っておきたい基礎知識
 乳房の解剖
 乳房の領域
 乳房の可動性組織と固定組織
 乳房X線撮影装置の特徴
 精度管理
  1.乳房Ⅹ線撮影装置
  2.画像表示系
 被ばく低減
 接遇の重要性

コラム
 胸郭変形した受診者の撮り方
 小乳房(厚みのない乳房)の撮り方
 乳房支持台の角度
 大胸筋の形からの緊張度チェック
 マンモグラフィと痛み(Part 1)
 マンモグラフィと痛み(Part 2)
 呪縛からの解放を(3つの大きな呪縛)
 乳腺は「ぶどうの房」
 マンモグラフィと痛み(Part 3)
 ジェボンズの逆説はマンモグラフィでも証明?
 いつも清潔に

あとがき

「ポジショニングはチークダンスを踊るように」
 これはフィンランドに留学しているときに,私の指導役だった技師に言われた言葉です.
 そのときはなんとなく漠然と理解したつもりでしたが,自分が真剣にマンモ(ポジショニング)に接すれば接するほど意味深い言葉と感じるようになりました.
 初めての受診者に,パーソナルスペースを最小限にしても信頼感を与え,ダンスのリード役として警戒心を与えず,すべてをコントロールできる一体感.私の理想とするポジショニングの基本は「チークダンス」かもしれません.
 日本ではまだ,多くの男性技師がポジショニングに携わっています.密着は難しいと思いますが,考え方,そして本書に書いたポジショニング理論は男性も同じです.
 フィンランドでマンモグラフィに携わる技師はすべて女性でした.「ポジショニングはチークダンスを踊るように」はマンモグラフィ検診の先進国として,その長い経験から生まれた言葉だと思います.私たちも後から続く国々,そして自分たちの後輩のためにも何か築き上げていく必要性を強く感じています.

症例画像ギャラリー
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