■ 画像診断の基礎の基礎,単純X線写真をコンパクト・アトラスに集約.
■ 疾患別ではなく「何を見ているのか」という視点で症例を分類整理しました.
■ 臨床での読影アプローチに従いながら,主要疾患の画像を学ぶことができます.
■ 放射線科医はもちろん,臨床で腹部単純写真に関わるすべての医師におすすめの一冊です.
■ 数少ない腹部単純写真のアトラスのなかでも,基本を抑えられる良書です.
■ 写真190点 図版72点
2004年2月某日の朝刊に,CTの被曝による癌発生の記事が掲載された.ここでCTと癌発生の関連に関して議論するつもりはないが,その記事から各国のCT台数が推測できる.日本は実に8000台のCTが存在することになり,おそらく現在ではさらに多くのCTが存在しているだろう.その記事から察すると,その数はアメリカの7000台を凌ぎ世界第1位である.現在,大学病院では複数台のCTが設置され,病院によっては10台近くのCTが一施設に存在している.一方でフィンランドやノルウェーではCTの台数は国全体で100台にも満たないのである.
確かに日本では医療の現場でCTは不可欠な存在になっている.しかし,かといって単純写真が消え去ることはないだろう.単純写真,特に胸部や腹部の単純写真は,「survey」として全体を観察するには非常に簡便で,どのような施設でもできる検査であり,経時的変化を追うことに関しても容易である.またバイタルサインが不安定な患者に対しても移動することなく撮影することが可能である.胸部単純写真に関しては,非常に多くの書物が市販されているものの,実は腹部単純写真に関しては,わずかしか存在していない.腹部単純写真は,胸部単純写真に比し得られる情報が少なく,臨床上の助けになることが低いと思われているためであろう.
先日,仕事の帰りに夜空を見上げてみた.多くの星が見えたが,知っている星座(私はその方面には疎いので,オリオン座,北斗七星,カシオペア程度しか知らない)はすぐに見つけることができるものの,その他の星座はわからない.おそらくいろんな星座があるのだろうが,知らないものは見えないのである.腹部単純写真も同様で,知っている所見は見つけることができるが,知識のない所見は平気で見落としているのである.読影できるようになるには,所見をたくさん身に付けておかなければならないということになる.しかし,ありとあらゆる所見を身に付けるのは不可能である.読み方の基本さえ押さえておけば,異常を察知することは可能である.単純写真で正常だからといって,病態として異常なしとは限らないが,単純写真で異常がある場合に,その先の検査(CTなど)への大きな助けになることは間違いない.
単純写真でわかるものは,X線透過性が高いもの(空気),低いもの(骨,金属など),およびその中間(水,軟部組織など)である.読影する際に始めから病名がわかるわけではなく,異常所見から病名・病態を類推することになる.それぞれの透過性の異なるものに関して,存在すべき場所に存在しない,存在してはいけない場所に存在する,存在してよい場所にはあるがその分布や形状が正常と異なっている,といった所見を見つけて読影を進めていく.したがって,本書では,病名ごとに写真を示すのではなく,異常所見から分類し,どのような疾患を疑うのかを示したつもりである.最低限必要な画像は掲載するように努力しており,みなさんの読影の助けになれば幸いである.
この本を執筆するにあたり,画像の収集に協力いただいた国立病院機構災害医療センター放射線科の倉本憲明先生・島田栄治先生をはじめとした放射線科の医師,慶應義塾大学病院救急部・放射線診断科の医師にこの場を借りて深く感謝します.
第1章 撮影の基本・読影の基礎
1. 撮影する
2. コントラストの成り立ち
3. 正常解剖と読影の仕方
第2章 空気を見る
NOTE:thumb-printingって
NOTE:側腹線条とは?
NOTE:pneumoportogramとpneumobilia
NOTE:門脈内ガス? それとも胆管内ガス?
第3章 脂肪を見る
NOTE:外傷患者における腹部単純写真の立場
第4章 軟部陰影を見る
NOTE:FASTとは
NOTE:このガス所見をどう読むか?
第5章 石灰化を見る
NOTE:中心静脈カテーテルが迷入しやすい血管
第6章 異物を見る
signおよび類語一覧
【あ】
圧迫骨折
胃潰瘍
胃癌
胃内ガス貯留
胃内血液貯留
黄色肉芽腫性腎盂腎炎
【か】
下大静脈フィルター留置
肝硬変
肝細胞癌
肝細胞癌リピオドールTAE
肝腫大
肝動注用カテーテル
気腫性腎盂腎炎
気腫性胆嚢炎
急性虫垂炎
虚血性大腸炎
胸膜石灰化
茎捻転
誤飲
後腹膜気腫
骨盤内腫瘤
【さ】
珊瑚状結石
子宮筋腫石灰化
磁器様胆嚢
小腸閉塞
消化管異物
上部消化管出血
上部消化管穿孔
静脈石
神経因性膀胱
腎細胞癌
腎腫瘍
腎損傷
鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニア嵌頓
【た】
大腸閉塞
胆管内ガス像
胆石
胆石イレウス
中心静脈カテーテル迷入
虫垂へのバリウム貯留
腸管壊死症
腸管通過障害
腸管嚢腫様気腫症
腸重積症
直腸異物
転移性骨腫瘍
【な】
尿管結石
尿路結石
【は】
バリウム残存・貯留
破裂骨折
馬蹄腎
脾腫
腹腔内液体貯留
腹腔内出血
腹腔内遊離ガス
腹水
腹部大動脈瘤破裂
閉塞性イレウスは
便秘症
【ま】
麻痺性イレウス
慢性膵炎
門脈気腫症
門脈塞栓症
【や】
輸精管石灰化
癒着性イレウス
【ら】
卵巣嚢腫
類皮様嚢腫
【欧文】
LPシャントチューブ留置
pneumobilia
S状結腸癌
S状結腸軸捻転症
S状結腸穿孔