■ 150人の乳房の超音波画像を収載.各症例は,年齢と性別,そして2枚の画像のみを提示したシンプルな構成でまとめています.
■ 症例は疾患別に分類されていないため,読者は予断なく画像に向き合い,ひとつひとつの画像を読み,考えられる疾患を推測することができます.
■ 乳房超音波の読影力を確実に高めてくれる,学び応えのある新しいスタイルのアトラスです.
■ 写真451点
我が国では昔から大勢の職人さんが活躍しています.伝統工芸品はもちろんですが,最先端の科学を駆使した工業製品であっても,職人さんたちの「巧の技」に支えられているという話はよく耳にします.本来,我々人間はすばらしい能力を持っているのだと思います.
医療の世界も,多くの先生方の職人技の上に成り立ってきました.とりわけ,画像診断をはじめとする形態学は,明確に数値化されるものではなく,見た目の印象から判断するという,もっとも人の技量に左右される分野といえるでしょう.その像に見え隠れする所見を見抜く直感やセンスといったものが必要とされます.しかし,近年ではガイドラインや診断基準といったものに書かれている言葉から学ぼうとする傾向があるように感じます.たとえば「境界部高エコー像があったら悪性と読む」と記されています.これを読んで頭で覚えることは簡単です.しかし,いざ実際の画像を見てみると「境界部高エコー像があるのかないのかよくわからない」ということになるわけです.やはり,画像診断をマスターするには多くの症例を経験するしか方法はないのです.
ということで,本書はたくさんの症例をお見せいたします.問題形式にいたしました.まず,右ページにある2枚の画像をじっくり見て,ご自身の見解を頭に描いたうえで裏のページをご覧ください.前半は比較的簡単な症例,後にいくにしたがって難解な症例を掲載しています.
私は,1980年から乳房超音波検査に携わってまいりました.装置は年々進歩し,画質も向上し新しい機能も増え続けています.しかし根本的な画像の読み方は,30年以上前と何ら変わるところがないと思っています.よって,画像診断は今後もさらに進歩してゆくでしょうが,本書に書かれた内容は,もうしばらくお役に立てるものと信じております.本書を読まれた皆さまの手によって,多くの患者さんが救われることを願ってやみません.
■ 本書は1症例を裏表2ページに掲載しています.
■ 1ページ目(右ページ)は出題のページ,2ページ目(左[裏]ページ)は解説のページです.
■ おおまかですが,前半には比較的容易な症例を掲載し,後にいくにしたがって症例の難易度が上がっています.
■ 年齢と性別
患者情報はこれだけです.家族歴・既往歴・他の検査データ等はありません.
しかし,乳腺疾患を診断するうえでもっとも重要な手がかりは年齢です.したがって,画像を解読するためのヒントはこれで十分と考えています.
■ 超音波画像
画像は2枚です.基本的には病変の最大断面とそれに直交する断面の画像です.症例によっては異なる部位の画像を示しているものもあります.それはそれでひとつのヒントになっています.画像のサイズはすべて統一しています.画面にあるスケールの1cmが誌面上も1cmになるように印刷されています.
■ 超音波画像
基本的には出題ページ上の最大断面の画像です.そうでない場合は最大断面よりも病変の特徴をよくとらえている画像,あるいは解説に必要な所見が描出されている画像です.
■ 所見の読み方
まず,病変の存在部位と大きさが書かれています.大きさが測れないものや測る必要がないものは大きさを書いていません.所見は,診断基準にある項目を羅列するようなことはしていません.主にその病変を診断するうえで重要な所見を記載しています.
■ 超音波診断
あくまでも著者の私見です.「こう読むべき」という模範解答であり,必ずしも病理組織診断とは一致しません.複数の診断名を挙げる場合は,「①○○,②□□」と羅列せず,「○○もしくは□□」とか「○○を考えるが□□も否定しきれない」といったように,その可能性を示唆する表現を用いています.推定組織型が(A>B)と書かれている場合は,「AB両方の成分があり,Aの成分のほうが多い」と「Aを第一に考えるがBかも知れない」といった両方のニュアンスを含んでいますが,いずれも極めて微妙なところで著者もどちらかに決められないので,このファジーな表現をお許しください.
■ 結果
乳癌の場合はすべて病理組織診断まで記載しています.この場合は,乳癌(A>B)と書かれていたら,「AB両方の成分があり,Aのほうが多い」という意味です.良性疾患は病理組織診断が得られていない場合,細胞診の結果もしくは良性と断定できる臨床所見を記載しています.他の画像診断は,施行された検査をすべて記載しているわけではなく,超音波画像との対比に必要なものを中心に選んでいます.
■ 解説
診断するうえで重要なポイントを解説しました.あえて参考文献は載せず,誌面内で簡潔に説明しました.もし,確認したい事項がありましたら,『乳房アトラス【改訂版】』『乳房超音波Q&A』をご参照ください.
■ 疾患別Case一覧
巻末に最終診断に基づく「疾患別Case一覧」を掲載しています.この一覧が逆引きの目次になっていますので,本書には巻頭にいわゆる「目次」を置いていません.